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アリバイ崩し承ります

美谷時計店の女性店主,美谷時乃が捜査一課の刑事である主人公から相談を受けて,アリバイ崩し(ときにはアリバイ探し)を行う安楽椅子探偵モノ。「本格ミステリ大賞受賞作」という肩書があるが意外な犯人や派手なトリックを期待して読むとやや期待ハズレかも。各作品は,本格ミステリとしての完成度は高いが,意外性や派手さはない。少ないページ数で,アリバイにまつわる魅力的な謎と,しっかりした論理的な謎解きを描いている職人芸のような作品。少し似たテイストの作品もあるがベストは「時計屋探偵とストーカーのアリバイ」(65/100)
○ 総合評価
 大山誠一郎らしい,余計な部分を削り取って謎解きに焦点を当てた本格ミステリ。時計屋のチャーミングな女性店主が,「時を戻すことができました。」といって,謎解きを始めるという設定は,ちょっとあざとい気もするが,そこまで気にならない。登場人物も最小限。捜査に行き詰まっている捜査一課の新人刑事が,美谷時計店の美谷時乃に相談をする。その相談を聞いて,美谷時乃がアリバイを崩す(ときにはアリバイを探す)。純然たる安楽椅子探偵モノ。それぞれの短編のクオリティは高く,傑作というようなものでもなく,意外性もそこまでではないが,40ページから50ページ程度で,しっかりとした謎解きをしている。
 とはいえ,「本格ミステリ大賞受賞作」として身構えて読むと期待ハズレ感があるかも。どの作品もよくできてはいるが,派手さはない。先入観がなしで読めばよくできた短編集だが,本格ミステリ大賞受賞の傑作という先入観で読むと,「そんなに面白い?」と思ってしまうかも。総合評価としてはギリギリの★4で。

○ 時計屋探偵とストーカーのアリバイ ★★★★☆
 主人公が美谷時計店を訪れ,美谷時乃と出会うシーンをあっさり描いた上で謎解き。離婚した夫婦の夫がストーカーで,殺人犯と見せかけ,実態は被害者である元妻から殺人の依頼を受けていたという展開 
 医師でもある被害者が,自分がもう助からない病気であることを知り,妹に早期に生命保険を受け取らせるために,元夫に自分を殺すように依頼。元夫には自ら協力してアリバイを作るという話
 ストーカーだと思われた元夫が,実はまだ元妻を愛していて殺人にまで協力するというプロットは面白い。50ページ程度できれいに謎解きを成立させている。★4で。

○ 時計屋探偵と凶器のアリバイ ★★★★☆
 暴力団同士が構想しているエリアのポストから凶器である拳銃が見つかる。それから被害者が見つかって,最も怪しい容疑者にはアリバイがあるという謎
 トリックは,拳銃を2つ使って殺人時間を誤信させるというもの。午後3時に回収されるポストから拳銃が見つかったので,ポストに拳銃が投函されたのは午後3時より前。よって殺人は午後3時より前に起こったと見せかけ,午後3時までは鉄壁のアリバイを作る。
 しかし,実際はもう1つ銃があり,そちらの銃で午後3時以降に殺人をしていた。
 誰にでも書けそうに感じてしまうようなエレガントな謎解き。これもレベルは高い。ただ,★5といえるほどの突き抜けるものがない。★4で。

○ 時計屋探偵と死者のアリバイ ★★★☆☆
 交通事故に遭ったミステリ作家が,自分は殺人をしたと告白して死んでしまう。実際に,ミステリ作家から聞いた女性の住所に行くと,死体が発見される。しかし,死亡推定時刻などを考えると,そのミステリ作家には殺人ができないアリバイが成立してしまうという謎
 魅力的な謎だが,この作品は解決がそこまでエレガントではない。大山誠一郎作品にはときおり見られるのだが,御都合主義とも思える偶然が重なる。
 まず,ミステリ作家は,耳が聞こえなかった。これはそれなりに伏線があるのだが,警察もミステリ作家の関係者も気付いていなかったという設定。これは無理があるのでは。ミステリ作家は自分の家で被害者の首を絞める。死んだと思ったが,実は生きていた。蘇生した被害者は自宅に帰宅・ミステリ作家に頼まれて被害者の自宅で被害者の弱みになりそうなものを探していた大家に遭遇。大家が被害者を殺害してしまう。
 いやいや,無理があるだろう。話としては面白いともいえるが,こんな推理できると思い難い。★3止まり

○ 時計屋探偵と失われたアリバイ ★★★☆☆
 ピアノ教師が殺害され,バーに勤める妹が殺人の容疑者となる。しかし,捜査一課の刑事である主人公には妹が犯人とは思えない。そこで,美谷時乃にアリバイを探してもらうという展開
 実はピアノ教師が犯人であるマッサージ師と協力して,マッサージ師の妻の殺人計画を立てていた。ピアノ教師はアリバイ作りのために,妹に睡眠薬を飲まし,マッサージを受けさせる。妹が見た不思議な夢はこのアリバイ工作が原因。しかし,ピアノ教師はマッサージ師に殺害されてしまう。
 これによりマッサージ師のアリバイが無くなる。真犯人はマッサージ師だった。
 込み入ったプロット。この被害者と真犯人が共犯関係ったというプロットで意外性を演出するのは大山誠一郎の得意パターンともいえそう。「時計屋探偵とストーカーのアリバイ」にも少し似た構成である。これもよくできているが,「時計屋探偵とストーカーのアリバイ」の二番煎じ感もあるため,割引。★3で。

○ 時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ ★★★☆☆
 これまでとちょっと経路が変わる。主人公が美谷時乃がどうやって祖父からアリバイ崩しについて学んだのか,少女時代の話を聞く。そこで,時乃は小学校4年生ときに,祖父から出題されたアリバイ崩しの問題を主人公に話す。
 午後3時20分から午後3時30分の間に,祖父は振り子時計を止める。しかし,午後3時25分には離れた場所の公園にいたという。証拠写真がある。
 トリックは,カメラを傾け午後2時20分を午後3時25分に見えるように写真を撮ったというもの
 実際の殺人に使ってしまうとバカミスっぽくなるトリック。それを上手く消化した感じ。★3で。

○ 時計屋探偵と山荘のアリバイ ★★★☆☆
 主人公が休暇中に訪れた山荘で殺人事件が起こる。将来,警察官になりたいという中学生の少年にだけアリバイがなく,警察に捕まる。中学生の少年の無実を晴らすために,美谷時乃に真犯人のアリバイ崩しを依頼する。
 トリックは被害者が犯人を殺害しようとして,違うサイズの靴を履いて時計台に来ていたというもの。犯人は,被害者より先に時計台にいて,遅い時刻に被害者が履いてきた靴を履いてペンションに戻った。
 これはちょっと真相が分かりにくい。設定などは面白いがレガントとまでは言い難い真相。★3で。

○ 時計屋探偵とダウンロードのアリバイ ★★★☆☆
 最後の作品は12月6日にしかダウンロードできないという楽曲のダウンロードを利用したアリバイトリック。これも込み入った設定になっている。
 殺人事件が起こり,なかなか容疑者が見つからなかったが,被害者の庭から白骨死体が見つかる。その死体はかつて,被害者の会社で働いていた経理担当。横領をして失踪したと思われていた人物。この人物が白骨したいとして見つかったことで,この人物の子どもが動機があるとして容疑者になる。これが犯人
 犯人は,自分に容疑が掛かるまで数か月かかると考え,友人を利用したアリバイトリックを作る。それは12月5日を犯行日時である12月6日と誤信させるというもの。そのカギとして12月6日しかダウンロードできなかった音楽を利用した。
 これは分かりやすい。真相は見抜くことができた。時計を遅らせ,12月5日から12月6日になったところでダウンロードしていたというもの
 ややチープなアリバイトリックのような感じなのが難点。★3で。
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