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風ヶ丘五十円玉祭りの謎

6点。裏染天馬シリーズ3作目。いわゆる「日常の謎」系のミステリに該当する短編集。「学食の食器を返さなかったのは誰か」とか「祭りでお釣りが50円玉でばかり返ってくるのはなぜ」といった謎に,裏染天馬が極めて論理的な推理をする。いろいろと小ネタが仕込まれているので,「体育館の殺人」と「水族館の殺人」を読んでから,この作品を読むべきだろう。個人的には,どちらかというとロジック重視の作品より意外性重視の作品の方が好み。しかし,この作品は裏染天馬や袴田柚乃といったキャラクターが非常に魅力的。文体も肌に合う。
〇 総合評価  ★★★☆☆
〇 サプライズ ★★☆☆☆
〇 熱中度   ★★★☆☆
〇 インパクト ★★☆☆☆
〇 キャラクター★★★★☆
〇 読後感   ★★★★☆
〇 希少価値  ★☆☆☆☆

〇 評価
 シリーズ3作目。この短編集単独でも楽しめないことはない。しかし,「体育館の殺人」と「水族館の殺人」を読んでから読むべき作品だろう。この2作品を読んでいれば分かる小ネタが結構たくさん用意されている。
 裏染天馬シリーズはキャラクター小説といえる。裏染天馬と袴田柚乃のキャラクターは秀逸。個人的な好みにもマッチしていて,この二人の活躍を見るだけで楽しい。
 ミステリとしては弱い。いわゆる日常の謎系ミステリ。「風ヶ丘五十円祭りの謎」と「天使たちの残暑見舞い」は魅力的な謎があるが,そのほかの3作品は謎も平凡。ミステリ的なトリックはほぼなく,プロットも弱い。やはりキャラクター小説だと言える。
 「図書館の殺人」に向けてのちょっとした伏線もある。インパクトやトリックは弱いけど,論理性は高い。
 シリーズ全体と特徴でもあるが,このシリーズは些細な手掛かりから真相を導く,その過程の論理性を楽しむ作品。また,それに加え,キャラクターの魅力もある。トリックや意外性に重きを置いていない。この論理性と意外性が結び付けば,いつか大傑作が誕生するかもしれない。論理性が高い小説なので,ぼーっと読んでもあまり楽しめない。しっかりと読み込まないと面白さは感じられない。
 キャラクターが好みで文体も合う。論理性が高く意外性が低いという点はやや好みから外れる。個々の作品のデキは及第点以上の作品がそろっていると思う。しかし,傑作とはいえないかな。★3だろう。


〇 もう一色選べる丼
 神奈川県立風ヶ丘高校の学食で,禁止されている持ちだした食器の未返却事件が発生。このままでは学食の持出しが禁止になる。居合わせた袴田柚乃と野南早苗は,裏染天馬に,食器未返却事件の犯人を捜すように依頼する。
 裏染は食器が置いてあった位置などから「左利きの男。髪は短めで茶色に染めている。痩せ型か若しくは中肉中背。背は180センチ以下。2年生か3年生」と推理。箸がないこと,ゴミの回収があったことなどから,犯人が最近彼女ができたテニス部の部長であると推理。犯人に食器を返却させる。「恋も食事も軽いくらいがちょうどいいんだ」という裏染天馬のセリフで終わる。
 いわゆる「日常の謎」系のミステリに属する短編。なぞは身近にある些細なもの。推理は論理的ではあるが,こんなに上手くいくかという思いもしないではないが,そこはそれ。シャーロックホームズの頃から,こういった残された手掛かりから犯人を導き出すという話は安定した面白さがある。及第点のデキだろう。★3で。

〇 風ヶ丘五十円玉祭りの謎
 風ヶ丘駅の近くの寝入神社で行われる夏祭り。その夏祭りで,多くの屋台が50円玉でお釣りを渡しているとう謎を推理する話。袴田兄弟と裏染兄弟,向坂香織が偶然に出会い謎を推理する。裏染鏡花は小銭を増やし,サイフを重くすることによるスリ対策と推理。天馬はスリ対策なら運営全体が依頼をする,目的を隠す必要がない,小銭が50円で返ってきても,それを使うのでサイフが重くならないという3つの理由で否定。加村兄弟の会話から懐中電灯を持ちだしたことを知り,加村兄弟が50円玉の流通を加速させ,落とし物としての50円玉を増やし,それを回収しようとしている計画だと推理。実際にその場面を柚乃と確認する。
 これまた日常の謎。なぜ50円玉でお釣りを返しているのかという面白い謎を推理する。裏染鏡花によるダミーの推理もある。日常の謎系のミステリが好きならかなり面白く読める作品だろう。謎も魅力的だし,50円玉の流通を増やしで落とし物を増やすという真相の意外性も面白い。個人的な好みでは,それほどこういった日常の謎系のミステリが好きでない。嫌いではないが,「ふーん」という感じで読んでしまう。★3かな。

〇 針宮理恵子のサードインパクト
 「体育館の殺人」でも登場していた針宮理恵子が主人公。針宮理恵子が付き合っている後輩,早乙女泰人が吹奏楽部でいじめられているのではないかと考え,裏染天馬に本当にいじめられているのか調べてほしいと依頼する。真相は部屋が暑く,休憩時間だけでもリボンを緩めたりブラウスの前を開けるくらいのことを女子がしていたので,男子である早乙女を追い出していたというもの。扇風機を借りることで解決した。裏染は針宮に水族館の無料入場券を渡し,針宮と早乙女の二人で行ってツーショット写真を送るように言う。これは「図書館の殺人」への伏線になっている。
 恋人である早乙女がいじめられていると誤解した針宮の行動と,誤解だったというオチはミステリとしては弱いが青春小説としてはそれなりに楽しめる。この作品が図書館の殺人での裏染天馬の行動の伏線になっているのも面白い。日常の謎系ミステリではあるが,ミステリとしては弱い。★3程度かな。

〇 天使たちの残暑見舞い
 演劇部元部長の宍戸が残した日記に女子高生二人の消失が描かれている。その謎を解くために柚乃と早苗に実演を依頼する。女子高生二人の消失の真相は9月1日=防災の日。関東大震災があった日である防災の日。6年前の防災の日に消防車のはしご車が来て女子高生を運び出していたという真相。柚乃は天馬が幽霊なんて存在しないってことを証明したくて,必死に謎解きをしたのではないかと考える。裏染は必至に否定するというオチ
 6年前に教室から女子高生二人が消失したという謎を推理するという設定は面白い。しかし,はしご車が来ていたという真相はやや興ざめ。一応,夏の終わり→8月3Ⅰ日→9月1日は防災の日という伏線はあるのだが,9月1日が防災の日という点が関東の人間でないとピンとこないことも伏線が弱くなってしまっている原因だろう。つまららなくはないのだが,傑作とは言えない。★3で。

〇 その花瓶にご注意を
 私立緋天学園が舞台。裏染鏡花が探偵役で体育館の殺人などでも出てくる仙道という刑事の娘である仙道姫毬という少女も登場する。謎は花瓶が割れたのでその犯人を捜すというもの。容疑者は矢烏誠二。鏡花は推理の上
で矢烏を追い詰めるが決め手がない。仙道をバカにされたことに腹を立て,鏡花は推理を進める。花瓶ではなく中の水が必要だった。袋詰めされた多量の花火と家庭用のマッチ。矢烏は小火を出して花瓶の水で消火していた。物証は水色のガラス。矢烏は水色のガラスを靴で踏んでいた。
 謎は花瓶の消失というもので,さほど魅力的でない。犯人は決まっているので倒叙モノのように犯人のミスを探すというモノ。ミステリとしては弱く,あまり爽快感もない。裏染鏡花や仙道姫毬といったキャラクターの魅力だけの作品か。ギリギリ★3で。

〇 おまけ 世界一いごこちの悪いサウナ
 裏染天馬とその父が偶然サウナで居合わせるという話。天馬の父の「母さんが心配している。たまには家に顔を出せ」。「ただし,私がいないときを見計らえ」というセリフがちょっとあったかい。
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