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グーテンベルクの黄昏

6点。「写本室の迷宮」の続編。「星野泰夫」の手記の謎に富井教授が挑む。第2次世界大戦の頃のヨーロッパが舞台。ドイツに占領されていたイギリス領土のガーンジー島における3人の死体が発見された事件,ベルリン郊外のゲストハウスでの密室殺人事件など描かれる。そして作中の最大の謎はヒトラーの切り札「ロムルス」の存在。プロローグの5つの情景がラストときっちり結びつくなど丁寧な伏線があるよくできたミステリ。その分,大きなサプライズはない。ミステリ慣れした人なら真相には気づいてしまいそう。また,やや冗長に感じた。
総合評価 ★★★☆☆
 写本室の迷宮を読んだときも思ったが,よくできたミステリである。ヒトラーの後継者が双子であることはミステリ慣れしていると分かってしまう。しかし,二人のうち一人が女性でプロローグで描かれているヒーラー大統領がヒトラーの娘とは予想できなかった。プロローグの5つの情景は,いずれも謎解き部分を踏まえたものになっている。その点も含め,よくできたミステリである。とはいえ冗長である。また,第2次世界大戦の頃のドイツを舞台にした作品は多い。それだけナチスや第2次世界大戦という舞台は歴史ミステリとなりうるような謎があるのだろう。歴史ミステリをそれほど読まない私でも,「黄昏のベルリン」と「D機関情報」の2つ読んだことがある。メインプロットはヒトラーには「ロムルス」称された後継者がいる。この後継者は双子であり,うち一人は女性であるという点だろう。この点はミステリ慣れしていると途中で気づいてしまう。作者としても結構気付かれてもよいと考えているのだと思う。もう一つの謎は「サリカ法」。「女性の相続を認めない」というこの法があったので,ヒトラーの娘をこの法の影響が少ないイギリス又アメリカに亡命させたというものだ。「サリカ法」が真相だと言われても全くピンとこない。
結局,このミステリはヒトラーの後継者が双子という点は平凡なプロットで,もう一つの真相が「サリカ法」という専門的なもので分かりにくい。その割に冗長であるという点が難点となっている。第2次世界大戦の頃のヨーロッパという舞台設定で,登場人物はよく描かれている。小説としては面白いのだがミステリとしてはプロットが弱い。冗長と感じるという評価となってしまう。殺人事件も2つ起こる。ゲシュタポが棟の上で死体で見つかるという事件の真相は飛行機から落ちるというもの。バカミスといっていいトリックだがこれはさらっと謎解きしている。もう一つは自殺に見せかける密室トリック。ユダヤ人の犯人を壁に塗り込んでしまうというトリック。犯人を壁に塗り込むという密室トリックは結構えぐい。この点は評価できる。この時代のこの背景なので成立したトリックといえる。この2つの殺人事件を短編として独立させ,連絡短編集にしてもう少しコンパクトにまとめた方がよかったのではないかと思う。評価としては6点。良さを感じる部分があるだけに残念。傑作になり損ねた作品のように思う。
 
サプライズ ★★★☆☆
 第2次世界大戦の頃のヨーロッパが舞台の作品。ヒトラーに関する「ロムルス」とは何かが謎として描かれる。真相は,「ロムルス」とはヒトラーの子ども。双子であり兄と妹。そもそも子どもがいることも秘されていたが,双子であるということがトップシークレットだった。しかし,ミスディレクション的なものがないので,ロムルスがヒトラーの子どもであること,おそらく双子であろうということが,ミステリ慣れしていると分かってしまう。ただし,双子のうち一人が女性で,プロローグで描かれているヒーラー大統領こそがヒトラーの娘だとは予想できなかった。サプライズ感は少ないがよくできている。塔の上で見つかったゲシュタポの死体の謎はバカミスチック。飛行機から落下というものでサプライズ感はそれほどない。密室はユダヤ人が密室の壁に塗り込められたというものでサプライズよりホラーチックな寒気がする感じ。サプライズは★3か。

熱中度 ★★★☆☆
 登場人物に外国人が多く,更に登場人物が多い。カナリスとカイテルとかややこしい名前も多い。場面の移り変わりも激しいと,なかなかに読みにくい。星野泰夫の手記部分は読みやすいのだが,ドイツ人たちのやり取りは誰と誰が同陣営かが分かりにくい。歴史的な背景がきっちり整理されていれば読みやすいのだろうが。塔の上の死体という魅力的な謎はあっさり解明させてしまう。密室殺人も星野泰夫は興味を示しているが,話の持って行き方が密室殺人の謎に焦点が当たらないので,物語を引っ張るほどの魅力がない。「ロムルス」とは何かという点でひっぱっていく感じ。熱中度はそれほど高くない。★3で。

インパクト ★★☆☆☆
 よくできたミステリなのだが,ロムルスの真相がヒトラーの双子の子どもで,そのうち一人が女性。最後はアメリカ大統領になっていたというプロットはそれなりにインパクトはあるが,それでも地味さが否めない。塔の上の死体のトリックや密室殺人など,もう少しうまく描いていればインパクトはあったかもしれないが。インパクト薄めの地味ミステリになっている。★2で。

キャラクター ★★★★☆
 この作品の実質的な主人公である星野泰夫をはじめとして,ゾネンベルガー,カトリーヌなど登場人物は十分魅力的に描かれ,書き分けられている。★4で。

読後感 ★★★★☆
 富井教授と星野エリカが結ばれるというエンド。ヒットラーの娘がアメリカ大統領になっている点についてはハッピーエンド感が薄れるが,総合的に見て読後感は悪くない。★4で。

希少価値 ★★★☆☆
 本屋では手に入らないけどプレミア的価値はなし。図書館で借りた。希少価値としては★3かな。

メモ
〇 写本室の迷宮の続編。写本室の迷宮の最後で富井教授が星野泰夫の娘エリカに出会い,星野泰夫の新たな手記を読んで謎を解いてほしいと言われる。その手記がこの「グーテンベルグの黄昏」であるという設定
〇 殺人事件は2つおきる。一つは,ガーンジー島で雨宮という陸軍の少佐とイギリス人メイドとゲシュタポの死体が見つかる事件。イギリス人メイドと雨宮少佐はゲシュタポに殺害され,ゲシュタポはイギリス人に殺害された。ゲシュタポはイギリスの飛行機から塔の上に落ちたというもの。昔,推理クイズモノでこんなトリックのクイズを読んだなと思った。
〇 マントイフェル伯爵夫妻の密室での殺人事件。自殺して処理されたこの事件の真相はユダヤ人が犯人で殺害した後,壁の裏に隠れていたが塗り込められて壁に閉じ込められたというトリック。密室トリックとしては特殊な設定でしか使えないもの。それなりに驚ける真相ではあるが見せ方がイマイチ
〇 写本室の迷宮で描かれていた謎を解くための10の手掛かり。その手掛かりを使って解いた真相の鍵は「サリカ法」。ヒトラーの後継者を意味する「ロムルス」の真相は,ヒトラーの子どもは双子でそのうち一人は女性だったというもの
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