FC2ブログ
HOME   »    »  13人の探偵士

13人の探偵士

6点。主人公は記憶喪失になり死体と一緒に密室で倒れているところから始まる。主人公が謎の連続殺人犯キャットなのか。それともキャットの罠にはめられたのか。密室殺人,ダイイングメッセージ,ハードボイルド探偵など,さまざまなミステリ要素が詰められた作品。もともとゲームブックだった作品であり,3人の探偵による捜査の様子が描かれたり,ゲームブックのゲームオーバーの場面なども描かれる。それら上手くまとめる手腕はさすが山口雅也という感じ。ただし,もとがゲームブックということもあって,個々のトリックがやや陳腐なのが難点
総合評価 ★★★☆☆
 もともとは,1987年に「13人目の名探偵」というタイトルで,ゲームブックとして発売されていた作品。「13人目の名探偵」が絶版になって手に入らなくなっていたことなどから1992年に大幅に加筆修正して出版された。そういった経緯が「あとがき」に当たるNOTEに書かれている。現在は,手に入りやすくなるために発売されたはずのこの作品まで手に入りにくくなっている。新刊で売っている本屋さんはないし,古本屋でもあまり見かけない。今回は図書館で借りて読んだ。中学生頃,ゲームブックは結構読んでいて,「ルパン三世 謀略の九龍コネクション」とか好きだった。よって,ゲームブック風の味付けは好み。ゲームブック版の「13人目の名探偵」を当時読んでいたら感動していたかもしれない。1つのミステリとして読むと,どこかで見たトリックの寄せ集め感がある。密室トリックは被害者が犯人だったというもの。ダミーの密室トリックも含めて,どこかで読んだことがある感があるが,それなりにまとまっている。ダイイングメッセージもふーんという感じ。キャラクターもそこまで魅力的ではない。パラレル英国などの背景となる設定が魅力的なだけにちょっと残念。もとがゲームブックでもあり,個々のトリックがそこまで練られていないのも仕方がないのだろう。最後のバーチャルリアリティというオチも陳腐。うーん。いろいろな要素を取り入れたミステリクイズ本という位置付けなら十分楽しめるがミステリとしてはあまり高い点は付けられないかな。★3で。

サプライズ ★★★☆☆
 被害者であるクリストファー・ブラウニング郷こそが連続殺人犯キャットだったというサプライズが用意されているが,割とそうなんじゃない?と予想できてしまうためサプライズ感が少ない。ミステリをあまり読んでいない状態で読んでいると,違った感想になるのだろうが。私が日本から来た近松林太郎という探偵であるという点も,近松林太郎が日本人でありながらハーフであるという点も相まって,サプライズとなるはずなのだが,これはきっちり読んでいないと驚けない。総合的に見てサプライズ感は少なめ。山口雅也らしいというか、サプライズ型ではなくロジック型のミステリである。★3で。

熱中度 ★★★☆☆
 密室の中で被害者と一緒に発見された人物が主人公で記憶喪失。謎の連続殺人犯キャットの存在と多数の探偵士達…とミステリ好きならたまらないような面白い要素がてんこ盛り。先が気になるのは間違いない。しかし,3人の探偵ごとの推理パートがあって,中には同じ文章を読まされたりもする。この読みにくさが没入感を削ぐ。熱中度としては★3程度になるか。

インパクト ★★★☆☆
 もともとゲームブックということで,随所に残るゲームブックらしさが新鮮でインパクトはある。捜査をする3人の探偵も密室郷の探偵,ハードボイルド探偵,女性探偵とバラバラ。それなりの個性もある。しかし,なんというか地味なのである。連続殺人犯キャットが探偵皇という探偵界のボスであるなどインパクト強そうなのだが,実際は薄い。そもそもパラレルワールドのイギリスの世界観が地味。探偵皇もすぐ死んじゃうので地味。私の正体が日本から来た探偵だというのももっとうまく書けたインパクトがありそうだが地味。その伏線も上手いといえば上手いのだが,折込の新聞記事の一部にちょこっと残っているだけ。地味。山口雅也の文体が地味なのかもしれない。最後のオチのバーチャル・リアリティというのも今となっては地味だなぁ。★3で。

キャラクター ★★★☆☆
 ブル・バーロウ・ルイスという3人の探偵士はそれなりに個性的。キッド・ピストルズとピンクが出てくるのもファンにはうれしい。とはいえ,全体的に世界観が地味なので,キャラクターも地味になってしまう。主人公の正体が近松林太郎という日本人探偵なのだが,こいつもバックボーンなどが全くなく地味。何より,せっかく魅力的になりそうな連続殺人犯キャットが被害者だと言う点がキャラクター的な魅力を削いでいる。★3で。

読後感 ★★★☆☆
 沖と小笠原がいったん結ばれるが3か月で自然消滅。ヌーディストだった主人公達は再従兄弟島という楽園を失う。やくざの息子の包茎手術を失敗してやくざに追われることになった浅川もなんか悲惨。読後感は良くはない。しかし,リアリティがない登場人物のため,感情移入をすることもない。よって,読後感が悪いというわけでもない。★3で。

希少価値 ★★★☆☆
 なかなか手に入らないんだけどまだプレミアは付いていない。再販されるかどうかでプレミアがつくか,手に入りやすくなるかが変わりそう。微妙。現時点では希少価値は★3かな。

メモ
〇 プロローグは犯人=キャットとある名探偵が対峙しているシーン。このキャットが本編で被害者だと思われていたクリストファー・ブラウニング郷。名探偵が本編主人公で記憶喪失になっていた日本から来た名探偵近松林太郎
〇 この作品はプロローグから第1章に当たる「幕間の口上」までは一本道だが,そこから3つに分岐し,3人の探偵の捜査がそれぞれ描かれる。主人公である記憶喪失の「私」が選んだ探偵の捜査する姿が描かれると言う趣向であり,もともとゲームブックだった作品の名残ともいえる。途中でのゲームブックにおけるゲームオーバーを迎える話の描写がいくつか出てくる。
〇 3人いる名探偵のうち一人はヘンリー・ブル博士。事件を密室という観点から捜査・解決しようとする。本格ミステリ寄りの名探偵。解決編では密室談義を行う。密室トリックとしては被害者が密室の内と外のボーダーラインで襲われ自ら密室を作る。凶器は死体発見の混乱で犯人が持ち去ったと推理。犯人はベヴァリー・ルイスだとする。
〇 3人の名探偵のうち一人はマイク・D・バーロウ。ハードボイルド風の雰囲気で,事件を掛かっていた音から捜査し,麻薬関係の部分へと進む。話の中で被害者であるクリストファー・ブラウニング郷が麻薬密売組織のボスであることが分かる。暗号を解いてヘンリー・ブルがクリストファー・ブラウニング郷から麻薬を買っていたことを知り,ブルが犯人だったと推理する。
〇 3人の名探偵のうち一人はベヴァリー・ルイス。女性探偵で,事件をダイイング・メッセージから捜査・推理する。話の中でダイイングメッセージ談義がある。リーチ兄弟という兄弟への捜査があり,バーロウが兄弟の3つ子のうちの1人であると分かる。そして,犯人がバーロウであると推理する。ダイイングメッセージはラテン語で家猫の意味。家庭的の意味でバーロウを意味すると推理。密室トリックは機械的なトリックだと推理するが上手くいかない。
〇 探偵士100年祭で,シャーロック・ホームズジュニアの死体が発見される。これは,殺害される前にクリストファー・ブラウニング郷が殺害していた。同様殺人の順番どおりに殺人がされたと思わせる読者へのトリックになっている。
〇 真相は,ダイイングメッセージは「CATIS」の後ろに窓ガラスで塗料で書かれた部屋の主の名前が映るというもの。クリストファー・ブラウニング郷が自分がキャットであることを示すためのメッセージを残していた。
〇 シャーロック・ホームズジュニアが口内炎で熱いものが飲めなかったことをクリストファー・ブラウニング郷が知っていて,シャーロック・ホームズジュニアの席が冷たいスープになっていたというところが,クリストファー・ブラウニング郷がキャットで既にシャーロック・ホームズジュニアに会っていた(殺害していた)の伏線になっている。
〇  近松林太郎が母親がイギリス人で外国人に見えることの伏線は,とじ込みの新聞の写真のところにある。
〇 複数の探偵に依頼をしたり,ゲームオーバーに当たる選択肢を選んだような記憶があることについては,バーチャルリアリティ装置の経験だったという設定となっている。主人公は実際は誰かの探偵に捜査を依頼したのかは誰にも分からない。そもそもの解決すらバーチャルリアリティかもしれない・・・というオチ
スポンサーサイト
Comment
Trackback
Trackback URL
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する
カウンター

ブックメーター
やまだんさんの読書メーター
ブクログ
ブログランキング
このサイトの価格

最新の記事
最近のコメント
カテゴリー