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涙香迷宮

5点。作者である竹本健治が作った48首以上の「いろは歌」が紹介されているミステリ。その才能と労力には敬意を表する。しかし,ミステリとしてはそれほど面白いと感じなかった。殺人事件は起こるのだが,そのトリックもプロットも及第点以下。暗号部分は「なんかすごい」と感じるが,解読には古文の知識が不可欠。ロジックも論理的過ぎて,「そうだったのか」と感じるより「ふーん」と感じてしまう。黒岩涙香,連珠,いろは歌といった雑学について書かれた部分は楽しく読めた。総合的に見ると,ギリギリ及第点程度。それほど楽しめなかった。
評価
 サプライズ ★☆☆☆☆
 熱中度   ★★☆☆☆
 インパクト ★★★★☆
 キャラクター★★☆☆☆
 読後感   ★★★☆☆
 希少価値  ★☆☆☆☆
 総合評価  ★★★☆☆

● サプライズ ★☆☆☆☆
 菅村悠斎と榊美佐子を殺害した犯人は小峠元春。ミスディレクションとなるような人物も存在しない。そのため,サプライズ感は低い。黒岩涙香の暗号を解読した結果,発見されたお宝が逆文となっているいろは歌というのもサプライズ感はない。

● 熱中度 ★★☆☆☆
 殺人事件には,トリックらしいトリックもなく,魅力的な謎もない。暗号解読部分もロジカル過ぎてあまり楽しめない。なんかすごいことをしているという印象。あまり,先が気にならず,物語を引っ張っていく力に欠ける。ただし,黒岩涙香や連珠,いろは歌などについての雑学知識部分はそれなりに興味深く読める。

● インパクト ★★★★☆
 殺人事件部分は平凡だが,48以上のいろは歌が収録されているので,いろは歌のミステリとしてのインパクトはある。

● キャラクター ★★★☆☆
 牧場智久と武藤類子というシリーズおなじみの主人公。それなりに魅力的に描かれている。しかし,ほかの登場人物がそろって牧場智久を褒め称えているのが,リアリティに欠ける。一人くらい反発する人物がいてもよさそうなのだが。犯人の小峠を含め,涙香マニアの面々や歌人の弥生,被害者の美佐子などそれなりに魅力的だが,いかにも竹本健治作品に出てきそうなタイプのキャラクターばかりである。

● 読後感 ★★★☆☆
 暗号は解けるが,すっきりしたというよりふーんという感じ。ロジカル過ぎるし,古文についての知識がいるので,なるほどそうだったのか…となりにくい。殺人の動機=詰連珠の作者の地位をのっとりたい…というのも分からなくはないのだが,長編ミステリとしてはやや弱い。読後感はよくも悪くもない。

● 希少価値 ★☆☆☆☆
 かなり話題になった作品。しばらくは問題なく手に入る。ただし,10年後,20年後にどうなっているか。それほど面白くないので,手に入りにくくなっている可能性はある。 

● 総合評価 ★★★☆☆
 黒岩涙香,連珠,いろは歌といったいろいろな雑学について書かれている部分は,非常に楽しく読める。竹本健治作品にありがちな分かりにくさ,すっきりしなさはなく,シンプルな作り。それでいて,多数のいろは歌といろは歌に隠された暗号の技巧は見事で,なんか凄いと感じることができる。そのあたりが本格ミステリ大賞を受賞したゆえんだろう。しかし,問題は,「本格ミステリ大賞受賞」とか「超絶技巧の暗号ミステリ」といった賛辞が独り歩きして読む前にハードルが上がり過ぎてしまうことである。はっきり言って,この作品はそれほど面白くない。面白くないが,技巧がすごいので感心するという作品である。そういった意味では玄人向け。話題になっているという理由で買って読んだ人のほとんどは「ふーん。それで」となって,「それほど面白くない」で終わってしまうだろう。
 個人的には竹本健治好きなので,物語の雰囲気と雑学部分は楽しめた。しかし,肝心の殺人事件部分については,短編ミステリ程度のデキ。正直,いろは歌部分と雑学部分を除いた殺人事件部分だけを取り出すと及第点に達しない短編ミステリになるだろう。いろは歌の技巧と雑学部分の面白さに敬意を表してギリギリ★3で。

メモ
老舗旅館,隋宝閣で殺人事件が起こる。刑事の楢津木は,たまたま一緒にいた旧知の牧場智久に現場に来るように依頼。智久は,現場に残された碁石が普通の対局で使う碁石より多いことに気付く。
武藤類子は,友人と参加していたミステリナイトというイベントで,麻生徳司達と知り合いになる。
智久は,黒岩涙香が残した連珠の基本形に残された暗号を解読する。そして,明山にある涙香の隠れ家を発見する。
智久と類子達は,涙香の隠れ家の探索に参加する。その雑談の中,ふとしたヒントから,智久は冒頭の殺人事件の被害者の身元を明らかにする。
涙香の隠れ家で,智久達は,涙香が残したという48のいろは歌を紹介される。そのうちの1つが暗号ではないかと考える。
楢津木から連絡があり,冒頭の殺人事件の被害者が「菅村悠斎」という独居老人であることが分かる。菅村は涙香展の準備会に参加しており,麻生達と会っていた。
智久が落石に遭う。すんでのところで助かる。落石は誰かが故意に落としたものである疑いが強い。
類子の一言から,48のいろは歌の最初の1文字に隠された49番目のいろは歌の存在に気付く。
その歌は椿,榎,楸とあって,鍵となることばが柊であると推理する。
榊美佐子の死体がトイレで発見される。美佐子は智久のコップを使い,毒を飲んで死んでいた。智久は落石により命を狙われ,更にコップに毒を仕込まれていたことになる。
智久は,メンバーの中に菅村悠斎を殺害した人物がいて,自分が真相を暴く前に殺そうとしているのではないかと推理する。
智久は,犯人捜しを中断して,涙香が残した暗号の解読を優先する。柊からひひら+かす→ひひらかす→転として暗号の鍵を探し出し,最終的には28宿のヒキツボシとウルキボシだと見抜く。それぞれに対応する天井のパネルを抜くと,中からさらにいろは歌が見つかる。この2つのいろは歌は逆文になっていた。
暗号を解いた智久が小峠を誘ってトイレに行くと,小峠は智久を殺害しようとする。菅村と美佐子を殺害した犯人は小峠だった。
小峠は菅村が造った詰連珠の問題を奪うために,菅村を殺害していた。

楢津木…刑事
牧場智久…囲碁棋士。探偵役
麻生徳司…黒岩涙香研究科
大館茂…ミステリ評論家
井川邦芳…ゲーム研究家
永田靖久…黒岩涙香マニア
菱山弥生…歌人
小峠元春…パズル作家
緑川拓郎…地元のミステリマニア
榊美沙子…地元のミステリマニア。被害者
家田美津夫…編集者
菅村悠斎…被害者
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