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万能鑑定士Qの最終巻

7点。最終巻らしく,人気のあるキャラクターが総出演。メインは「クジラ」という男に盗まれ破られた「ムンクの叫び」を,修復が可能な120時間以内に集めるため謎に挑むというもの。リアリティに欠ける展開であり,謎もそれほど魅力的なものではない。「クジラ」が誰かという点も,ミスディレクションとなる人物がいないので,あまりサプライズがなく,物足りない。しかし,メインとなる謎以外は,最終巻らしく盛り上がる。松岡圭佑らしい話し運びの上手さがあり,すっきりした終わり方。これでシリーズが終わってしまうのは,やはり寂しい。
〇 評価
 サプライズ ★★☆☆☆
 熱中度   ★★★★☆
 インパクト ★★★☆☆
 キャラクター★★★☆☆
 読後感   ★★★★★
 希少価値  ★☆☆☆☆
 総合評価  ★★★★☆

 万能鑑定士Qシリーズの最後の作品。「クジラ」と称する男にムンクの叫びが盗まれる。ムンクの叫びは4つに破かれている。奇蹟の修復家と呼ばれる植村寛雄が,ムンクの叫びを修復するには,120時間以内に全ての断片を集める必要がある。ムンクの叫びの断片を回収するために,凜田莉子は,クジラから出題される問題に挑む…というのが大まかなストーリー。
 万能鑑定士Qシリーズによくあるリアリティはあまりない設定。莉子に,スリリングな知的ゲームをさせるためにかなり無茶なストーリー展開になっている。万能鑑定士Qの推理劇1の「宝石鑑定トーナメント」や,万能鑑定士Qの推理劇3の「海外芸術能力鑑定ツアー」に近いノリの作品になっている。
 ムンクの叫びの断片の回収のための知的ゲームというメインのストーリーに,凜田莉子と小笠原悠斗の関係がどうなるかという恋愛要素が絡められる。あと,万能鑑定士Qの推理劇2のラストでわだかまりを残した漢那和希
と息子の颯太との関係がどうなるかという点も絡む。
 漢那和希と颯太との関係は,万能鑑定士Qの推理劇2のラストでこのシリーズでは珍しくハッピーエンドにならなかった。その二人を再開させたところはほっこりする。そもそも,漢那和希や颯太はこの作品に登場する必要性がない。それをわざわざ登場させているのは,ファンサービスの一環だろう。この点は読後感をよくしている。
 メインのムンクの叫びに関する謎解きは,論理パズルやちょっとした勘違いを利用した人探しなど。この部分は,万能鑑定士Qの事件簿8の台湾での捜査に似ている。正直,シリーズ最後の作品の謎解きとしては物足りない。真犯人が植村寛雄だという点も,ほかに犯人になり得る人物がいないので,あまりサプライズがない。「アンリ・ベイレンドルクって誰?」,「モレキュラー・ボンドなんて空絵事」と言って謎解きを進める莉子の推理は面白い。しかし,いくらなんでも,2枚同じ絵を描かせ,オークションで9億円で落札し,修復をしたと偽装するということが成功するとは思い難い。この点から目をそらすために,コピアに依頼してムンクの叫びの贋作を作らせ,ムンクの叫びを修復するという動機が…うまくいくとは思えない。さすがにリアリティがない。メインとなる謎には不満がある。
 小笠原と莉子の関係がハッピーエンドで終わるという点は感慨深い。ものすごい時間を掛けて仲を深めてきて,一回心が離れたという展開からのハッピーエンド。それも,小笠原の思いに莉子が気付くという展開に,雨森花蓮,漢那和希,コピア,紗崎玲奈,三木本沙彩といった面々から助言を受けてよりを戻すという展開。長いシリーズだからこそできる話の持って行き方。純粋にほっこりできた。
 シリーズ最後の作品にふさわしく,わだかまりのあるエピソードにケリを付けた上で,主要なキャラクターを総登場させている。メインの謎がしょぼかった点だけが不満。評価としては,ちょっとおまけの★4で。

〇 メモ
 プロローグで,これまでのあらすじとして,凜田莉子のライバルであるコピア(弧比類巻黎弥)の存在,凜田莉子と小笠原悠斗の関係,小笠原が幼馴染である三木本沙彩と仲を深めていることなどが紹介される。
 エドヴァルド・ムンクの「叫び」が10年周期で盗まれていることが紹介される。そして,南青山の画廊で保管されていた「叫び」が盗まれた。
 莉子は,ノルウェー大使館のエミル・ヨハンセンから秘密裡に協力を依頼されていた。しかし,チープグッズへの就職を選び,経営の立て直しに成功したら協力すると返事をしていた。
 チープグッズに奇蹟の修復家と呼ばれている植村寛雄がやってくる。かつて,ベルギーのアンリ・ベイレンドルクの「湖畔の花壇」を修復したという。莉子に,メンフィスC62という時計の鑑定を依頼する。莉子は出張鑑定に向かう。莉子が何者かに尾行されていることを見た瀬戸内楓は,警察に協力を依頼するが断れる。
 楓は小笠原に協力を依頼する。小笠原はグランドウエルの面々のテストを受けていた。楓から莉子がさらわれたかもしれないという相談を受け、調査を始める。
 莉子は美術品コレクターの森岡健一郎宅でメンフィスC62を鑑定する。莉子は本物と鑑定するが,その存在に疑問を持つ。鑑定を終えた後,小笠原達と合流する。
 瀬戸内陸は,府中刑務所の釈放準備指導の一環として,漢那和希と対話する。漢那は蔦暮亜芽里とも面会する。
 後日,莉子はロシア系マフィアの一員に連れていかれる。コピアが作った「信楽茶碗・相恩寺大忠伝」の贋作を鑑定するように依頼される。しかし,そこにいたのはコピアの兄である小比類巻修。当然,贋作は作れない。莉子に,なんとかごまかせないか相談する。莉子と修はなんとか窮地を脱出。警察が踏み込む。
 ここで,ノルウェー大使館と凜田莉子が正式に接触する。しかし,事態は変わり,莉子への依頼は取り下げる。また,莉子は植村寛雄を呼ぶ。植村はメンフィスC62のレプリカを作り,販売しようとしていた。しかし,メンフィスC62はコピアが作った贋作だった。植村は,多額の負債を負う可能性があったが,莉子に救われる。
 ノルウェー大使館は,ムンクの叫びが盗難の際に破かれていた事実を知る。
 瀬戸内陸が出所する。同時に漢那和希も出所する。瀬戸内は出所のパーティに漢那を誘う。出所パーティに,宇賀神警部とノルウェー大使館がやってくる。ムンクの叫びは窃盗というよりテロ。クジラと名乗るテロリストからの犯行声明があったという。警察と大使館は,莉子に,植村に破られた「叫び」の修復の依頼の仲介をしてほしいと頼まれる。
 莉子は植村に,叫びの修復の依頼を取り付ける。警察,「クジラ」からの挑戦となる問題のサイトの情報をマスコミを使って公表する。
 雨森花蓮から莉子に連絡がある。花蓮は,莉子に,警察が叫びの修復に失敗したときは,コピアに叫びの贋作作らせようとしているとの情報を提供する。莉子は警察抗議するが受け入れられない。花蓮は,莉子に自分のしあわせを見付けてと言い残して,莉子の前から姿を消す。
 莉子は,サイトの問題に「ムンクはイエスですかと聞いたら,あなたはイエスと答えますか」という答えを入力し,正解する。「東京都杉並区阿佐谷南1-49-7」という住所が示される。
 莉子,小笠原,漢那の3人は示された住所に行く。レバーを使った金庫があった。莉子はなんとかその金庫を開ける。中には4つに裂かれた叫びのうちの1つの断片あった。
 クジラからの次の指令は,昨日ディーラーで車の購入を成約させた「柳場秀介」に面会しろというもの。柳場秀介は15歳の少年だった。柳場から手紙をもらう。「奈良市念仏寺,明暦二年来の風情ある鐘,耳をすませば」と書かれた紙を受け取る。
 莉子は昭和34年に念仏寺の鐘が移された品川のグランドプリンスホテルの庭園に向かう。温度を入力するなどの問題を解き,叫びの二つ目の断片を見付ける。
 次の問題が入力されたSDカードが見つかる。問題は「浪越隆二課長」の職場を訪ねろというもの。浪越は潜入捜査をしている刑事だった。よってその職場は警視庁。彼のもとに届いた封筒に,叫びの三つ目の断片が入っていた。
 最後の問題,フェイズ4は,ルジャンドル予想。数学史上最大の難問だった。
 漢那は,莉子の調査に同行し,考えを改める。莉子に対し,颯人に会おうと思っていると告げる。漢那と颯人は再会する。
 小笠原は,独自にヨセミテ銀行の取締役を調査する。
 三木本沙彩は,紗崎玲奈に小笠原の調査を依頼していた。三木本は小笠原に,玲奈が見抜いた小笠原の本心を告げる。
 ルジャンドル予想は解くことができず,「クジラ」から最後の手紙とムンクの叫びの最後の断片が送付される。120時間を経過しており,植村は修復を試みなかった。
 莉子による真相の推理。最も利益を得た植村が怪しいと推理するが,リスクと利益が見合っていない。莉子は水鏡瑞樹に相談する。
 莉子は植村と対峙する。モレキュラー・ボンドという修復法は空絵事だと告げる。莉子は,植村が無名の画家2枚同じ絵を描かせ,オークションで9億円で落札し,修復をしたと偽装したと告げる。
 植村の秘書である荒川が全てを告白する。荒川は植村の息子だった。植村は,技術者を求心するために,過去の犯行を行った。そして,疑問を呈し,検証を求める団体から強請られ,今回の犯行を行っていた。
 コピアから情報を得ていた警察は植村を逮捕しようとしたが,植村は自ら犯行を告白する。
 莉子はコピアと対峙し,10年前,ムンクの叫びを盗んだのがコピアであり,そもそも,本物として飾られていたのがコピアによる贋作だったという推理を告げる。コピアは莉子に物証を求める。そこに小笠原が登場する。ヨセミテ銀行の取締役を計算で説得し,証拠を得ていた。「弧比類巻黎弥」は,「孤比類巻黎弥」という名を使って口座を作っていた。
 雨森花蓮,漢那和希,三木本沙彩を通じた紗崎玲奈,コピアなど,数々の人の言葉を踏まえ,莉子は小笠原との仲をもとに戻す。本物のムンクの叫びが見つかる。
 莉子はUNEAPの誘いを正式に断る。万能鑑定士Qの事務所には美容室レティシアに戻っていた。
 莉子と小笠原はフィジーで結婚式をする。添乗員として浅倉絢奈が同行していた。
 エピローグ。莉子はチープグッズで働き,桜という娘がいる。莉子は,桜の弟を妊娠している。鑑定にまつわる謎は,人の死なないうちに探偵となった小笠原悠斗が解決する。
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