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万能鑑定士Qの謎解き

7点。「角川文庫」から出ているQシリーズとしては最終巻。中国の贋作問題と,弥勒菩薩像等の洋上鑑定と略奪騒ぎという,日本と中国の外交関係にまで関わる大きな事件を取り扱っている。ミスディレクションが乏しく,勘のいい人だと真相は見抜いてしまうと思う。しかし,話の作り方がうまく,登場するキャラクターも魅力的。余計な描写もなく,テンポよく描かれているので,最後まで熱中して読める。莉子と悠斗の関係の変化など,シリーズを順番に読み,20作目として読むと非常に楽しめる。この作品単品で考えると,評価は下がってしまうが…。
〇 評価 
 サプライズ ★★★☆☆
 熱中度   ★★★★☆
 インパクト ★★★★☆
 キャラクター★★★★☆
 読後感   ★★★★☆
 希少価値  ★☆☆☆☆
 総合評価  ★★★★☆

 シリーズ通算20作目。扱っているテーマは中国の贋作,中国との外交問題と大きい。フーヂーズという謎の贋作集団についての捜査と,弥勒菩薩像と瓢房三彩陶の二つが日本で作られたものか,中国で作られたものかという点が謎の焦点。フーヂーズは,中国のスポーツ政策への反抗から,スウという名士が作った組織で,中国がオリンピックをボイコットすることを目的として活動していた。途中,中国の贋作輸出額が2位の国が,意外なことにブラジルである…という伏線がある。
 弥勒菩薩像と瓢房三彩陶は,実は同じものが二つあった。これにコピアの存在を絡めてくる。
 物語としての完成度は高い。先が気になって一気に読んでしまった。しかし,サプライズ感は薄め。ランファンなどBICCが寝返っていたり,一見いい人風の白良浜美術館の倉本館長代理が悪役だったり,サプライズ風の要素はあるが,明かし方が驚かせようというものになっていない。最後に一気に明かすタイプではなく,パラパラと真相が描かれる。また,ミスディレクションがないので,消去法で,ランファン達が犯人だと分かってしまう。
 サプライズ面こそ弱いが,話づくりのうまさ,キャラクターの魅力はさすが。日中の関係が良好になり,莉子と悠斗の関係も一歩前進するというラストは読後感もよい。
 いきなりこれから読むとそれほどでもないかもしれないが,20作目として読むと非常に楽しめる良作。★4で。


〇 メモ
 北京にて。工場を閉鎖し,喘息の娘を持つツァイ一家が騙され,1000千万元の負債を負う。凜田莉子が医師を連れて訪れ,「フーヂーズ」という違法なコピー品を製造している正体不明の団体の仕業であることが分かる。莉子は知財調査の関連会社の支払でツァイの娘の治療をさせる。
 莉子は,中国国内に溢れかえる偽物商品の摘発に尽力するプロ集団であるBICC(ベスト・インターナショナル・コンサルティング・カンパニーリミテッド)の調査員である林蘭芳(リンランファン)に連絡をし,フーヂーズの拠点の一つである倉庫に踏み込む。
 ランファンの上司である肖外龍(シャオ・ウワイロン)の協力もあって,フーヂーズの関係者を確保。フーヂーズの総指揮者であるソンダーダオテイの身柄を確保する。証拠隠滅桶を利用した証拠隠滅を,莉子の機転とランファンの行動で阻止する。ソンダーダオテイの正体は,スウ・シアオジュンという名士だった。小笠原の活躍もあり,スウの逃亡を阻止する。
 ランファン達は,スウが自供した秘密工場に突入する。蘭ファン達が突入してから30分ほどして警察が突入。秘密工場はもぐりのスポーツクラブだった。この捜査に人手が割かれたことを利用し,スウは脱走する。
 莉子は警察で,葉山翔太警部補から依頼を受ける。中国から輸入されている偽物の山を前に,東アジア貿易担当大臣を務める杉浦周蔵から,次世代ガソリンといわれる「グローグンファクターZ」の偽物が作られないようにしなければならない。情報提供などで協力してほしいという。
 孤比類巻修が保釈される。孤比類巻黎弥が立ち会う。保釈金を出したのは黎弥。黎弥は,莉子に,「後になってこの方がよかったと感じられるはずだ」と言い,更に「のろまを自覚しているペンギンを,すばしこさに自信のあるシロクマは,決して捕まえられない」というアドバイスをする。
 翔桜寺の弥勒菩薩像について,非公式の洋上鑑定が行われる。弥勒菩薩像は中国に奪われる。洋上鑑定の実現に尽力したのは杉浦大臣。中国は,日本から返還を受けたと発表。瓢房三彩陶という陶器で,二度目の洋上鑑定が実施されることになった。莉子も鑑定家として同乗することになった。莉子は,瓢房三彩陶が日本で作られたものと鑑定し,中国側のリウ・ドウチユンという鑑定家を納得させる。瓢房三彩陶は日本に引き渡される。
 中国は,瓢房三彩陶が日本に奪取されたと発表する。
 二度の洋上鑑定について,日本では秘密裡に行われていたこともあり,大きく報道される。グローグンファクターZの工場で爆発事故が起こる。莉子は報道陣に追われるが,月刊角川の編集部の助けもあり,東京を脱出する。翔桜寺の弥勒菩薩像を研究していた博多港外にある白良浜美術館に向かう。
 白良浜美術館で,「館長代理の倉本麻耶に会う。同美術館で,パルトロメーオ・アンチェロッティ作の「十二使徒」の絵のうち,もっとも価値のあるマタイが紛失するという騒ぎに遭遇する。
 莉子は,ランファンと連絡を取る。ランファン達の助けを借り,秘密裡に中国に入国する。中国に向かう船の中で,悠斗は莉子に告白する。
 莉子達は,例のもぐりのスポーツジムを隠れ家として捜査を行う。中国政府が,弥勒菩薩像があったと主張する潭拓寺に向かう。帰り道で,莉子は,偶然,パルトロメーオ・アンチェロッティ作の「十二使徒」のマタイの複製画を見付ける。
 莉子は「贋作村」と言われる大芬村を訪れ,本物のマタイを見付ける。その額縁からメモリーカードが見つかる。メモリーカードは犯罪計画書であり,グローグンファクターZについての記載もある。莉子は,機械を欺き,4リットルのグローグンファクターZを盗み出す方法を思い付く。
 莉子と悠斗は眠らされ,船の中で起きる。船の中で,桑畑光蔵館長と出会う。桑畑が言うには,弥勒菩薩像は,翔桜寺と潭拓寺に一つずつあったという。瓢房三彩陶も二つあった。洋上鑑定は2箇所で行われていたのだ。
 謎解き。莉子はもぐりのスポーツクラブこそ,フーヂーズの最高司令部であるという。莉子と悠斗が中国に入国できたのは,旅券の贋作があったから。マタイの複製画を発見させたのも,ランファンが意図してその道を通らせたため。犯罪計画書を莉子に見せたのは,サンプルを奪取する方法を考えさせるため。
 スウもスポーツジムにいた。スウの目的は,中国がオリンピックをボイコットすること。そのために,日本との関係を悪化させていた。莉子は理想実現のために不法を見逃せないとして,スウ達を説得する。
 莉子は帰国し,白良浜美術館に行く。館長代理としてい働いていた倉本麻耶こそ,莉子の偽物として洋上鑑定に臨んだ人物だった。洋上鑑定で偽の莉子にあったリウの立ち会いのもと,麻耶は中国公安部に身柄を確保される。
 洋上鑑定。弥勒菩薩像と瓢房三彩陶は二つあることが確認される。複製品輸入の問題もフーヂーズが自然消滅したことで解決。日中の関係が修復する。
 杉浦大臣は,弥勒菩薩像と瓢房三彩陶が二つあるのはコピアの仕業ではないかと主張する。莉子はコピアにそっくりの兄が保釈されていることを理由に,コピアの仕業とは言えないと主張。黎弥が言っていた「後になってこの方がよかったと感じられるはずだ」とは,このことだった。
 エピローグで,莉子は,「同じ発音の漢字を充てるの。ひらがなやカタカナがない中国の人が,分からない漢字を書くときには…」と,悠斗が質問していたことへの答えを伝える。莉子と悠斗が手を取り合って駆け出すシーンでエンド 
 
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