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万能鑑定士Qの事件簿 8

5点。莉子の故郷の波照間島の議会を相手に,海水淡水化の発明を,12億円で売るという台湾人が現れる。連絡を受けた莉子は怪しいと思い,台湾へ向かう。莉子と莉子の同級生の葵と結愛,台湾で知り合った美鈴という女性が協力して台湾で人探しをする。それぞれのキャラクターの魅力もあって,それなりには楽しめる。ただし,話全体を支えるトリック=海水淡水化の発明のトリックは,短編小説で使いそうなアイデア。このアイデアでここまで話を膨らますのはさすがだが,捜査過程も,緊張感に乏しい。シリーズ全体ではやや下位のできかな。


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やまだんさんの読書メーター
著者 : 松岡圭祐
角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日 : 2011-02-25
〇 概要
 波照間島から,凜田莉子のもとに,「水不足は解消。寄付はもう必要ない。」との手紙が届いた。不審に思った莉子が故郷に戻ると,12億円で夢の発明を買えると信じ,喜ぶ議会の人がいた。詐欺ではないかと疑った莉子は,学生時代の友人,葵,結愛とともに,発明者がいる台湾へ向かう。莉子は,故郷を救うことができるのか?

〇 総合評価 ★★★☆☆
 シリーズ8作目は,波照間島の渇水問題という,莉子が上京した目的にからんでくる話。小笠原や氷室といった登場人物の活躍はあまりなく,莉子の同級生である葵,結愛そして台湾で知り合う美鈴といった面々が活躍する。
 海水の淡水化のトリックは,湖を海と誤認させるというもの。このトリックそのものは面白いが,いくら波照間島の議員が世間知らずでも,12億円ものお金を,サンプル一つもらわないうちに払ってしまうというのは,全くリアリティに欠ける。莉子だけでなく,葵,結愛,そして台湾で知り合った美鈴まで併せた4人で捜査をするという展開は面白い。しかし,捜査の内容がまたしてもイマイチ。犯人グループが,追跡者が誰かつきとめるために罠を仕掛けていたという展開なのだが,そんなことをする必要性に欠ける。その上,莉子は,その罠に引っ掛かり続けるという展開。これも面白みにかける。タイムリミットが過ぎてから,すべての仕掛けに気付き,湖の近くの村に行くのだが,そこから先の展開もイマイチ。犯人グループが,携帯電話をそのままにしていたというのも問題だが,携帯電話のSIMカードを交換するというトリックで,美鈴を警察と誤認させるというトリック一つで,犯人グループが詐欺を認めてしまうというのが…。御都合主義というか,浅い。トータルで見ても,平均点以下のデキだと思わざるを得ない。読みやすさと湖を海と誤認させるというワンアイデアは秀逸なので…ぎりぎりの5点で。

〇 サプライズ ★★☆☆☆
 今回は,議会が12億円を振り込むまで…という時間制限があるタイム・クライシスもの。サスペンスっぽい雰囲気であり,サプライズはあまりない。
〇 熱中度 ★★★☆☆
 時間制限があるサスペンス…ということで,熱中度は高そうなのだが,それほどでもない。莉子だけでなく,葵,結愛,美鈴の女性4人での捜査に緊張感がない。白士鶏欧が仕掛けているトリック(追跡者が誰かを見分けるために仕掛けたトリック)がしょぼい。結局,12億円はどうなるのかという部分で引っ張っている。そこそこ。
〇 インパクト ★★☆☆☆
 弱い。海水淡水化のトリックは,そもそも場所が海の側ではなく,湖の側に来ていて,最初から淡水だったというもの。短編のアイデアならよいが,議会を騙して12億円を詐取する詐欺のメイントリックがこれというのは,やや寂しい。莉子達による捜査過程も,海外(台湾)を舞台にしている割に地味
〇 キャラクター ★★★★☆
 優等生という葵と,アホきゃらの結愛はそれなりにいい味を出している。しかし,この二人がいるせいで,莉子が本来の魅力を発揮しきれていない印象がある。今回の作品は,この3人に美鈴を加えた4人による捜査と割り切るべきか。犯人役は明らかに役不足
〇 読後感 ★★★★☆
 やや御都合主義のようなラストだが,12億円は戻ってくる上に,莉子の評判もあがるのでラストの読後感は悪くない。「アンパンマン」という告白も悪くない。
〇 希少価値 ☆☆☆☆☆
 希少価値はない。
〇 メモ
〇 竹富町議員の嘉陽果煌達は,台湾に行き,黄春雲という人物から,海水淡水化の技術を購入する約束をする。
〇 莉子のところに,議会から,渇水問題が解決したので,寄付はもう必要ないという内容の手紙が届く。
〇 海水淡水化関係で,莉子は石垣島の役場に行く。役場で,学生時代の同級生だった嘉陽果葵と再会する。
〇 葵の父に会うために,莉子は波照間島に戻る。そして,学生時代の同級生,祝嶺結愛に再会する。
〇 莉子は,葵の父から,海水淡水化技術の映像を見せてもらうが疑わしいものだった。氷室の意見も同じ。莉子は,葵に頼み,出費を辞めるように説得させてもらう。
〇 莉子は,議員の前で,情報を得るまで12億の出費をしないように説得するが,受け入れられない。
〇 莉子は,台湾に行くことを決意する。
〇 莉子は,教えられた漁村にっ向かうが,黄春雲には会えない。台北に向かう。
〇 台北には特に手がかりがなく,莉子,葵,結愛は台北のホテルに一泊する。
〇 シェラトンで美鈴という台湾人に出会う。日本語が分かる人物として祖父を紹介してもらう。
〇 美鈴の祖父の瑞賢と弟の大坤に会う。瑞賢に警察に同行してもらい,漁村で倉庫を借りていた人物を教えてもらう。蔡徳有という人物だった。
〇 莉子と結愛は蔡徳有の行方を追う。葵は,父親が間違っているかもしれないと思い,動揺し,莉子達のもとを離れるが,美鈴に出会い,美鈴とともに莉子達を追う。
〇 訪れた家にはいくつかヒントがあり,ゴム手袋を得る。それから,土林夜市のネットカフェのような場所の「個室を予約した用紙を得る。
〇 土林夜市のネットカフェのような場所の個室には,マジックミラーや,台湾の懐かしい歌謡曲が流れているコンポがあった。暗号も見つかる。
〇 莉子が暗号を解読。オタクっぽ人がよくいくデパートと分かる。そこにも誰かが借りた場所がある。次の行先をなんとか突き止める。次の行先は「…龍虎塔の頂上。帝の見つめる洞窟」
〇 氷室から話を聞き,小笠原が波照間島に行くが,送金を止められない。
〇 莉子達が,龍虎塔の頂上。帝の見つめる洞窟に行くとそこにはお餅があった。
〇 タイムアップ。莉子が小笠原に電話をすると,小笠原は波照間島にいた。議会は既にお金を振り込み,相手から連絡がないので,紛糾しているという。莉子達は二手に分かれ捜査を続けるが,手掛かりがない。道で莉子と葵は途方に暮れ,泣いていると親切な台湾人がわかめスープをくれる。莉子がそれに口を付けると閃きが起こった。
〇 莉子達は,ついに黄春雲達に会う。彼らは実は日本人だった。莉子は,彼らの携帯電話を奪い,彼らに説明をする。莉子が言うには,白士鶏欧(黄春雲)達は,石垣島に向かったという。
〇 石垣島の議会は紛糾している。その議会に白士鶏欧達が逮捕をしてほしいと入ってくる。その後からは莉子達が入ってくる。
〇 台湾で汽車といえばバスのこと。しかし,嘉陽果煌達は電車に乗った。これがトリックだった。嘉陽果煌達は海ではなく大きな湖のほとりに行った。だから海水が淡水になったと勘違いしたのだった。莉子達の追跡は,追跡者が誰かを知るために白士達が仕組んだのだった。
〇 莉子は,SIMカードを入れ替えることで,自分達が警察だと誤解させた。台湾では振込詐欺が終身刑であり,日本で自首した方が刑が軽くなると考えさせ,自首させた。
〇 12億円は,おばあさんが日本に持ち込んだがが「〒」が台湾では銀行,日本では郵便局を示すという罠を利用して捕まえた。
〇 エピローグ。莉子は東京に帰る。美鈴達が日本に来る。
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