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花の下にて春死なむ


5点。ビアバー「香菜里屋」シリーズの第1弾。この短編集を最初に読んだときは,あまり面白いと思わず,シリーズを読み進めなかった。北森鴻のほかの作品を読んでから,「桜宵」などの続きを読み進めた。改めて読んで,シリーズの後の作品に比べ,読みにくいと感じてしまった。情報過多というか,登場人物が整理されておらず,あまり書き分けられていないため,物語の中で誰が何をしているのかが捉えづらい。シリーズの後の方の作品は,シンプルで傑作と思える作品も多いが,この短編集の作品はどれも及第点だけど,傑作とは思わなかった。

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〇 概要
 気の利いたビアバー「香菜里屋」のマスター,工藤が,謎と人生の悲哀を解き明かす連作ミステリー。シリーズの第1弾であり,第52回日本推理作家協会短編及び連作短編集部門の受賞作でもある。

〇 総合評価

〇 メモ
〇 花の下にて春死なむ ★★★☆☆
 フリーのライターである飯島七諸が主人公。自由律句の結社「紫雲律」の同人「片岡草魚」が死亡する。片岡草魚には身元,血縁を示すものが何一つない。七緒は,片岡の故郷が山口県であり,何らかの理由で故郷に帰れないと思っていることを知っている。七緒は,山口県に片岡の正体を探しに行った。
 片岡が故郷に帰れない理由は,片岡が長府大火という火災を発生させていたからだった。その原因は,コレラの妹がいて,火葬をする必要があったから。なお,片岡が死体として発見された際に桜の花が咲いていた原因は,その裏で殺人事件があり,死体が濡れていることをごまかすために,暖房と冷房を同時に着けていたので,その室外機から出る熱風により,桜が咲いていたのだった。工藤はそのことを推理した。
 やや読みにくい文体であるが,なかなか雰囲気のある良作。ただし,個人的な好みの作品ではない。★3で。

〇 家族写真 ★★★☆☆
 野田克弥という,妻と別れたサラリーマンが主人公。香菜里屋を訪れ,見事な帆たて料理を食べる。その帆たて料理の材料となる帆たてが送られてきた経緯について,香菜里屋で常連の推理が始まる。常連の推理は,新聞記事が工藤が作ったもので,工藤の作り話をきっかけとして地元に帰ったのだと推理した。
 野田は,家出少女としばらく一緒に住んでいたが,急にその家出少女は田舎に帰った。そのきっかけが工藤だったことを野田は知ったのだ。野田は,少女の紹介で香菜里屋に通い始めたのだった。
 これも,人物関係がなかなか頭に入らない。読みにくい話である。じっくり考えて読むとなかなかの作品。やや文体が肌に合わない。★3で。

〇 終の棲み家 ★★★☆☆
 カメラマンの妻木信彦は,多摩川の河岸で小屋らしきものを作って住んでいた寺岡夫妻に出会う。取材を続け,「終の棲み家」として紹介をした。反響を呼び,個展を開くまでになるが,河原の小屋は跡形もなく撤去されていた。工藤は,香菜里屋で妻木からこの話を聞き,寺岡夫妻は,小屋が撤去される前に出て行ったのではないかと言う。その後,寺岡夫人(寺岡というのが偽名だった)から手紙が届く。寺岡老人は既に亡くなっており,ポスターを剝がしたのは,婦人がなつかしさから行っていたことだった。読みやすい作品だが,ミステリ的な意外性は薄い。いい話だとは思うが…★3で。

〇 殺人者の赤い手 ★★★☆☆
 笹口ひずるが登場する。赤い手の魔人が小学生を襲うという内容の怪談が流行ったり,殺人事件が起こったり。香菜里屋の周りでぶっそうな事件が起こる。実は,怪談話を作ったのは笹口ひずるだった。14年前,ひずるの弟が死亡した事件が殺人だったのか,事故だったのか,そのことを知りたいと思い,何か新しい手がかりが見つからないかと思って怪談を広めた。百瀬健次という警官が登場するが,百瀬はひずるの弟の友人だった。百瀬は,ひずるの弟が死亡したのは事故だったと伝える。また,工藤は,殺人事件の犯人=赤い手の男は蕎麦屋の出前持ちではないかと推理する。よくできた話とは思うが,可もなく不可もなくというイメージ。★3

〇 七皿は多すぎる ★★☆☆☆
 東山朋生が登場。回転寿司屋で鮪ばかり7皿食べる男について推理をする。男は女性職人に何かを伝えたい様子だったとのことだが…。
 高林は,鮪の前のネタの頭文字でメッセージを伝えたと推理するが,それなら直接その寿司を食べるのではないかと反論される。北はモールス信号なのではないかと推理する。東山は自分の推理として,モールス信号ではあるが,文字ではなく数字であり,寿司を取るか取らないかで数字のモールス信号で不倫の時間を伝えていたのではないかと推理する。
 しかし,自分の推理に納得できない東山は工藤の推理を聞く。工藤は,男は事件に関係しており,アリバイ作りのために鮪男の話をしていたのではないかと推理する。
 これは,平凡なデキ。★2

〇 魚の交わり ★★★☆☆
 飯島七緒が主人公の作品。片岡草魚が鎌倉で残したと思われる句が七緒宛てに送られてくる。しかし,七緒の記憶では,草魚は鎌倉から山口の姉のもとに手紙を送っていなかった。その謎を調べる。
 手紙を送ったのは佐伯克美。叔母である佐伯絹枝は病気で下半身不随になっていた。その叔母が残したノートに片岡草魚のものと思われる句があったという。
 また,七緒にプロポーズをした高塚正雄が警察に捕まる。正雄は自分が無罪であるとして,目撃者の少女を探す。
 正雄が目撃者だと思っていた少女は盲目の少女だった。また,七緒は,草魚は絹枝が森本という男を殺害しているところに出くわし,盲目のフリをして下半身不随の絹枝を連れ帰ったのではないかと推理する。
 草魚は盲人のフリをしていたので,実家に手紙を出せなかったのではないか。また,盲人でないことがばれたので絹枝は自殺をしたのではないか…
 これも高塚の事件と草魚の事件が入り混じっており,やや説明不足で読みにくい。いい話だとは思うのだが…。この短編集の作品は,どれも読みにくさを感じる。★3
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