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人生相談は真夜中のバーで

7点。「モーさんの隠れ家」というショットバーのマスターが,客から持ち込まれる相談に答えたり,自分が事件に巻き込まれたりする。個々の作品はミステリとして完結しているが,全体を通じた趣向がある。いずれも,蒼井上鷹らしい,底意地の悪オチが用意されている。蒼井上鷹は,とても好きな作家の1人。この作品もアルバイトの宇佐美野々や,向山という女性刑事など,女性の描き方がなんともいえない。底意地の悪さの中に,コミカルな部分もあるので,三谷幸喜なんかに脚本を書いてもらって映像化したら面白そう。好みの作風なので評価は甘め。


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〇 概要
 小さなショットバーのバーテンダーである「モーさん」は,客からの相談に乗ることも多い。しかし,悩みを解決するためのアドバイスが,おかしな波紋を巻き起こし,それがまさかの展開に…。蒼井上鷹らしく,それぞれの短編で登場した人物が相互に関連し,最後に意外な真相が語られる。ちょっと苦めの読後感の連作ユーモアミステリ

〇 総合評価
 蒼井上鷹らしさが発揮された,連絡短編集。どの作品も,ブラックでビターなテイストを持ったそれなりのレベルの短編であり,全体を通じた趣向がされている。
 伏線の貼り方が非常に巧妙。「第2話 貸したお金を返してもらえず困っています」で登場する花園が,「第6話 ネットでデマを流され迷惑しています」で再登場し,ちょい役かと思ったら,「最終話 前の彼女から貰ったものを捨てずに使っていたら,今の彼女と喧嘩になりました
」でモーさんが,花園のために死体を隠すという秘密を持っているという部分につなげている。
 この部分と,第1話からちょくちょく現れているココ先生ファンの女性=稲田の婚約者=祐太郎の後のモーさんの隠れ家のアルバイトである宇佐美野々との関係を絡めて仕上げた手腕はさすが。宇佐美野々のなんとも言えない描写と,宇佐美に嫌われるためにモーさんが仕掛けたトラップも合わさって,ビターな仕上がりになっている。
 第1話から最終話までの短編のデキとしては第2話と第3話くらいがミステリとしてそこそこのデキで,ほかはミステリとしてはそれほどのデキではない。意外なオチがある短編という雰囲気。それでも,モーさん,稲田,祐太郎など登場人物が個性豊かで,意外な人物と意外な人物がくっついたりするなど,なかなか楽しめる。
 トータルの評価は上々。久々に,蒼井上鷹らしい,底意地の悪い短編集を楽しめた。★4で。

〇 第1話 妻が新型インフルエンザ恐怖症になって困っています
 妻が新型インフルエンザ恐怖症になり,家に帰ると消毒薬を吹きかけるようになって悩んでいるという相談を,お客の寒川から聞く。モーさんは,奥さんは浮気を疑っているかもしれないとして,奥さんの友人の神保(女性)に相談し,それとなく浮気をしていないと伝えてもらうようにアドバイスする。しかし,本当は奥さんが浮気をしており,その浮気相手が神保(女性)だったというオチ。

〇 第2話 貸したお金を返してもらえず困っています
 モーさんが借りている店が入っているビルのオーナーでもある四坪という不動産屋とまごころ銀行の花園が登場する。四坪は川辺という客の姉から,花園は中林という顧客の保証人である室という人物から,どうやって借金を取り立てようか悩む。モーさんは,借主と仲良くなることで気持ちよく回収できるのではないかとアドバイスをする。花園は室さんとすっかりなかよくなり,中林のふりをして,室にお金を渡すが,室は中林を殺害していたことを告白する。四坪は,川辺の姉からお金を回収したが,その後泥棒に入られる。その泥棒は川辺の姉かもしれないとモーさんは思う。いずれにせよ,またしてもモーさんのアドバイスが悲劇をもたらしてしまった。

〇 第3話 カレシがいるのにほかにも気になる男の人ができてしまいました。
 芳野清美という女性は,遠距離恋愛をしているカレシがいるが,頼りになる職場の先輩に憧れを抱いている。カレシへの思いをはっきりさせるために,職場の先輩との距離を縮めてみてはどうか,とモーさんはアドバイスする。その後,清美のカレシは,北海道で逮捕されてしまう。商品である食品の賞味期限の偽装に関与していたという。清美は結果的に職場の先輩とは別れ,なんとモーさんのバーの見習いバーテンだった祐太郎と付き合い,一緒に富山に行ってしまう。また,モーさんのバーの常連で,モーさんに「ココ先生の人生相談」の代役を依頼していたフリーペーパーを発行している会社の稲田は,ココ先生信者の女性と婚約するというオチ

〇 第4話 子供が何を考えているのかさっぱり分かりません。
 モーさんは,見習いバーテンのアルバイトである祐太郎が辞めてしまったので,代わりのアルバイトを探す。マジシャンの卵もバイトを希望するが,酒が全く飲めないのでダメ。なかなか良さそうなバイトが見つかったが,そのバイトは,先代からの常連の蔦津田の行方不明の息子だったという。蔦津田の奥さんにもそのことを伝えるが,全て蔦津田の嘘であり,本当の蔦津田の息子は,刑務所に入っていた。その後,蔦津田の家で,蔦津田の妻が振り込め詐欺にあっていたことが分かる。蔦津田は,金持ちの娘である自分の妻から会社の資金を出させるために,振り込め詐欺をしているのでは?モーさんがそのように疑問を持ったところで終わる。

〇 第5話 キャバクラの娘とつきあいたいんです。
 常連客の本間から,キャバクラの娘と付き合いたいと相談を受けたモーさんは,一流のモノを身に着けろとアドバイスする。
 この作品では、「貸したお金を返してもらえず困っています。」に出てきた花園が再登場。銀行を辞めて,「レニ」というバーでバーテンのアルバイトを始めている。また,モーさんのバーには「宇佐美野々」というバイトが入る。
 この段階で,ココ先生の人生相談で回答を考えていたのがモーさんであると知ったレニのマスターは,かつて本当のココ先生のアドバイスで妻が家を出て行ったことから,モーさんを恨んで殺害しようとする。最後に誤解は解けるが…。

〇 第6話 ネットでデマを流され迷惑しています
 モーさんのバーでドラッグが手に入るという噂がネットで広まる。第5話でエアコンを修理した電気屋の向山が再登場するが,ドラッグの所持で捕まる。モーさんの隠れ家に捜査に来ていた二人のうち,女性の方の刑事は向山の従妹で,モーさんに好意を抱いていた。

〇 第7話 妻が子供を産んでから,すっかり太ってしまいました
 刑事の向山は,モーさんの隠れ家の常連になる。宇佐美は,モーさんに好意を抱いており,恋のライバルである向山がモーさんの隠れ家に来ないように策を練る。太っている人が苦手ということを知り,常連の本間を太らせたり。向山は独自に私的な捜査をし,宇佐美が稲田の婚約者であったことを知る。

〇 最終話 前の彼女から貰ったものを捨てずに使っていたら,今の彼女と喧嘩になりました
 かつて,モーさんの隠れ家でアルバイトをしていた祐太郎が再登場。第3話で結婚することになった清美との関係で,「前の彼女から貰ったものを捨てずに使っていたら,今の彼女と喧嘩になりました」という相談をモーさんにする。モーさんは,宇佐美に嫌われるために,モーさんの隠れ家にある巨大な冷蔵庫に,かつて,この店のオーナーだった澪という女性の腕がしまってあると伝える。本当は,冷蔵庫には,「貸したお金を返してもらえず困っています」で発覚した室が殺した中林の死体の遺骨が入っていた。モーさんは,中林が自分を恨まないように(「キャバクラの娘とつきあいたいんです。」でレニのマスターに殺されかけたことが影響している。),花園のために,中林の遺骨を預かっていたのだ。
 いろいろあった影響で,モーさんは「急性肝炎」になり,モーさんの隠れ家のマスターを辞める。モーさんの隠れ家のマスターは,花園が継いだ。最後は,「ネットでデマを流され迷惑しています。」で登場した,女性刑事の向山が,個人的関心から,現在のモーさんである花園の過去を調べ始めたというところで終わる。将来的には,花園が死体を隠していることに気付くのかもしれないという余韻を残して…。
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