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頼子のために


7点。冒頭で,娘の復讐を図る父による手記が紹介される。そして,その手記に書かれたスキャンダルから目をそらさせるために,「名探偵」法月綸太郎に捜査が依頼される。「対スキャンダル用の緩衝装置」として捜査の依頼がされたにもかかわらず,違和感を感じた法月綸太郎は捜査を進め,想像を絶する驚愕の真相に行き着く…。相当なイヤミス。そこまで登場人物に入り込めなかったのが救い。もっと人間が書ける作家がこのプロットで書いていたら,恐ろしい作品になっていたかも。このままでも十分に驚けるが,ちょっと惜しい気もする。


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〇 概要
 「頼子が死んだ。」17歳の愛娘を殺された父親は,通り魔事件で片付けようとする警察に疑念を抱き,ひそかに犯人を突き止めて,相手を刺殺,自らは死を選ぶ―という内容の手記を残していた。政治的な思惑から,「名探偵」法月綸太郎に捜査が依頼される。「対スキャンダル用の緩衝装置とは!」。法月綸太郎は,全く気のりをしないで,手記を読むが,手記に違和感を感じ,捜査に乗り出す。その裏には驚愕の真相が…。

〇 総合評価 ★★★★☆
 まれに見るほど,ひどいプロットの話である。妻を愛するがゆえに,妻が交通事故に遭う原因になった,娘を愛することができず,娘が父をだまして父の子を妊娠したと言い,そのために娘を殺すというのがプロット。そして,最後に父は自殺し,裏で糸を引いていたのは妻だと推理する名探偵…。いやはやひどい。しかし,人間がさっぱりかけていないので,あまりえぐさを感じない。それが救いになっているかも。人間が描けていたら…トラウマになりかねないほどの作品。ミスディレクションがほとんどなく,名探偵が出てくる作品である以上,犯人となり得るのは頼子の父である西村悠史しかいないのである。それでも驚けるほど,この作品のプロットは見事である。それだけに,人間が描けていないのが惜しいような…これでよかったような。ミスディレクションがもっと巧妙で,ミステリとしての技術があれば,また違った傑作になっただろう。そういった意味では究極に惜しい作品のような気もする。★4で。

〇 サプライズ ★★★★☆
 西村悠史が自分の娘である西村頼子を愛していたのではなく,憎んでいたという点はかなりのサプライズである。そのくらい,最初に描かれている手記のミスリードは確かなものだし,「親は,子を愛するもの」という思い込みは強い。頼子を殺した犯人が,父である西村悠史であるという真相は,これが本格ミステリである以上,それ以外に驚愕の真相がないというメタ的な読み方をしたとしても,それでも,驚ける。その上で,この一連の事件を裏で操っていた,心理的な意味での真犯人が母親の西村海絵だというのは…。もう少し,ミスディレクションがあれば,もっとサプライズはあったと思う。そういった意味ではちょっと惜しい。

〇 熱中度 ★★★★☆
 最後まで一気に読めた。読みやすく,熱中度は高い。人間が描けていない小説は,読みやすいという傾向があるかもしれない。読解力がいらないというか…。ただし,捜査の経緯が少し冗長に感じる部分がある。その点は割引き。

〇 インパクト ★★★★★
 父親が,愛する妻のために娘を殺害であり,インパクトは抜群である。法月綸太郎の存在価値も独特。全体を通じて,この作品を忘れることはなさそう。インパクトは文句なしの★5。

〇 読後感 ★★★★☆
 悪い。父親が娘を殺す話なので,読後感がいいはずがない。最後に,犯人に探偵が自殺を進めるというのも…。ただし,いつまでも心に残るようないやさがない。それは,人間がさっぱり描けていないからだろう。犯行を裏でコントロールしていた心理的な意味での真犯人が母である西村海絵であるというのは,インパクトはあるが,海絵がそのような人間に描けていないのが致命的。頼子の存在も希薄。犯人である西村悠史すら,あまり人間が描けていない。話としては最悪の読後感なのだが…。★4どまり。

〇 キャラクター ★★☆☆☆
 人間が描けていない。プロットとしては,最低のデキなのだが…。相沢紗呼とか,島田荘司とか,米澤穂信とかが書いていたら,もっとえぐい話になっていたと思う。まぁ
,あまりにひどい話なので,人間が描けていないという点が,逆に救いとも思えるが…。

〇 希少価値 ☆☆☆☆☆
 法月綸太郎の初期の代表作だし,法月綸太郎が,人気作家になっていることもあって,希少価値はない。
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